あれから数か月、真子はほとんど毎日、私の元にやってきては、
私を笑顔にさせていた。
胡蝶の如く 08
「でな、ラブがこんなこと言うてん!
『そりゃ、お前のせいだろ!』ってな。じゃあ俺が…」
「あははは!ラブらしいな!」
「やろう!?あ、そういえば、この前十二番隊の副官なった小さいガキ知っとるか?」
「あー…えーっと…」
「猿柿や、猿柿ひよ里。あいつとオレな、流魂街でちょっとの間一緒やったんや。仲良うしたってな」
「あぁ。では今度顔でも見に行こう」
本当に、真子が隊長に、いや、私の大切な人になってからとても楽しく心が穏やかだった。
真子には知り合いが多く、会うたびに紹介してくれるからか、私にも知り合いが増えた。
「隊長、変わりましたね」
「え?どういう意味だ、疾風」
「いや…よく笑うようになったな、と思って」
「…悪いか」
「いいえ、とんでもない!むしろそちらのほうが私も仕事がしやすいですよ」
「はぁ!?」
「ほら、感情を表に出すようになったでしょう?今までの隊長は常に無表情だったから…」
「…」
「隊員たちも今の隊長のほうが接しやすいって言ってますよ。これ、嘘じゃないですから」
そう言って執務室を後にする副官の疾風。
一人になり、ふふっと少しだけ笑った。
「本当に…笑えるようになったと思うよ」
※ ※ ※
数十年後。
私は真子と久々の非番を楽しんでいた。
「いやー。こんなけ隊長してると怠けてまうわー」
「本当だな。よく死なぬものだ」
「でもな、この前ちょっと死にかけてんけど」
「…そんなことあったか?」
「あったわぁ〜。虚とちゃうねんけどな、ひよ里が…」
「あぁ…それはそなたが悪いのだろう」
「ちゃうって!あれはほんまにひよ里にやつが…」
クスクスと笑いながら真子の話を聞く。
それが日常で、とても楽しかった。
「それにしても、平和だな」
「ほんまやなぁ〜」
「こんな日々が続けば、特隊も解散だな」
「そんなんしたらの仕事なくなるやん」
「別によい」
「暇なんで?」
「そなたが相手をしてくれるだろう?」
「はっ!毎日相手したるわ。飽きたとか言うなや?」
そんなこと、言うわけないだろう
そなたがこんな私を変えてくれたのに…
心の中でそう、私は呟いた。
春の心地よい風が私と真子の間を抜けた。
こんな日々が、ずっと続くようにと、私は心で願った。
2016/09/25