ふと、隣を見ると彼が…








    いない!!!











    「ちょっとー!!ダリューーーーン!!!







    今朝も私は、王宮の中を走り回っていた。








    「こら、。王宮で走り回るんじゃない」
    「あぁ、すいません、ヴァフリーズ様!ちょっと急用が…」
    「ダリューンなら中庭で見たぞ」
    「あら、本当!?ありがとうございます!








    私は回れ右をして元来た道を走って戻った。








    「だから走るなと……はぁ…」







    初夏の今、中庭には色とりどりの花が咲き乱れていた。
    その中でダリューンは本を読んでいた。
    私はそーっと気付かれないように彼の背後に回り込んだ。








    「…」
    「…、何をしているんだ?」
    「あ…バレちゃったか」
    「朝からまた王宮内を走り回っていたのか」
    「貴方は探してたのよ、ダリューン!
    「はぁ〜」










    ダリューンは深くため息を吐くと、本を閉じて私の目を見つめてきた。
    彼の黄金の目の中に、私が映った。










    「本当に…俺はダメだな」
    「え?何が?」
    「お前のその深い海ような目には弱い」
    「どういう意味!?私の目と海って同じ色なの?」
    「あぁ…」
    「へー!生きてるうちに一度でいいから見てみたいなぁ…海…」









    遠くに広がるという海に想いを馳せていると、ダリューンの手が伸びてきた。








    「ほら、行くぞ」
    「どこに?」
    「俺とメシでも食おうと思ってたんじゃないのか?」
    「あぁ!そうだ、だから探してたの!お腹ペコペコ〜」
    「行くぞ」
    「ダリューンには隠し事できないわねぇ」








    そういって私はダリューンの手を取った。

    ダリューンは私が思ったときに隣にいてくれる。
    たまーに居ないけど、でもそれはそれでいい。
    だってずっと一緒にいても疲れちゃうもんね。



    だから








    これくらいの 距離 が、ちょうどいい











    「…香水変えたか?」
    「気付いた?ダリューンと同じお店で買ったの〜」
    「これは…」
    「イランイラン…ムスクと相性がいいんだって」
    「あぁ、いい匂いだ」












    2017/05/07